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11月8日(金)~開催
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極彩色の悪夢的なビジュアルと先鋭的な音楽を融合し、それまで低く見なされがちだったホラー映画を官能的なアートへと変貌させたイタリアを代表する映画監督ダリオ・アルジェント。
彼が1970年前半に発表した初期監督3作は、いずれもタイトルに動物の名前が含まれていることから『動物3部作』(アニマル・トリロジー)と呼ばれている。
1作目『歓びの毒牙』(1969)は、主人公が目撃した「事件」を回想する構造を用い、観客が真相に迫るスリルを追体験するという、視覚的効果とサスペンス要素を融合させた画期的監督デビュー作。
2作目『わたしは目撃者』(1970)は盲目の元新聞記者を主役にした本格的サスペンスで、視覚の喪失というアルジェントの永遠のテーマを見事に映像化。
続く3作目の『4匹の蝿』(1971)は、現実の世界と悪夢の融合という彼の個性的な作風を確立した先駆的な作品だ。
従来のホラー映画やスリラー映画にはない視覚と音の融合、心理的サスペンスの追求、そして科学技術を駆使した新しい表現方法を導入したこれらの作品は、アルジェントの創造性と革新性の象徴である。
3作を通じて名匠エンニオ・モリコーネが実験的な映画音楽を提供しているのも要注目だ。
さらに「ジャッロ」と呼ばれるイタリアのスリラー映画ジャンルの確立に寄与し、1975年にそのジャンルの名声を確立した『サスペリアPART2』へと繋がる基盤となった。
昨年公開された最新作『ダークグラス』(22)でも、そのイマジネーションは衰えることを知らない。
ダリオ・アルジェントは今日に至るまでホラー映画のマエストロとして君臨、全世界の映画ファンから賞賛され、多くのクリエイターに影響を与え続けている。
『歓びの毒牙』 L’uccello dalle piume di cristallo/The Bird with the Crystal Plumage
(1969年/イタリア・西ドイツ/イタリア語/97分/カラー/スコープサイズ/モノラル)
©TITANUS Licensed by RAI Com S.p.A. – Rome, Italy. All Rights Reserved.
原作はフレドリック・ブラウンの『通り魔』。
アルジェントの監督デビュー作であり、彼の独特の映像美学と緊張感あふれるストーリーテリングが光る作品。
特にショッキングなビジュアルと斬新なカメラワークが特徴で、後のジャッロ映画に多大な影響を与えた。
アメリカ人作家サム・ダルマスはローマに滞在中、ギャラリーで起こった殺人未遂事件を偶然目撃する。
謎の連続殺人事件に巻き込まれた彼は帰国を断念し、現場で耳にした≪鳥の鳴き声≫を手がかりに真相を解き明かそうとする。
監督・脚本:ダリオ・アルジェント
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:トニー・ムサンテ、エヴァ・レンツィ、スージー・ケンドール
『わたしは目撃者』 Il gatto a nove code/The Cat o’ Nine Tails
(1970年/イタリア・西ドイツ・フランス/イタリア語/112分/カラー/スコープサイズ/モノラル)
©TITANUS Licensed by RAI Com S.p.A. – Rome, Italy. All Rights Reserved.
『歓びの毒牙』大ヒットを受け、各国からの出資を受けて作られた監督第2作。
サスペンスとスリルに満ちた心理描写、科学と犯罪が絡み合うプロットが魅力の本作で、アルジェントは自身の十八番である華麗なる殺人描写に磨きをかけていった。
『ダーティハリー』『時計じかけのオレンジ』『フレンチ・コネクション』などがひしめく1971年の映画興行界でイタリアを代表し、ジャッロ映画の礎の形成に寄与した。
遺伝学研究所での謎多き侵入事件と、所員である博士の列車での轢殺事件。
関係者が次々と殺される中、盲目の元新聞記者フランコ・アルノと若き新聞記者ジョルダーニは、決死の覚悟で犯人を追い詰めていく。
監督:ダリオ・アルジェント
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ジェームズ・フランシスカス、カール・マルデン、カトリーヌ・スパーク
『4匹の蝿』 4 mosche di velluto grigio/Four Flies on Grey Velvet
(1973年/イタリア/イタリア語/モノラル/104分/カラー/スコープサイズ)
©1971 SEDA SPETTACOLI ALL RIGHTS RESEVED. ©SURF FILM SrI ALL RIGHTS RESERVED.
「動物3部作」において最も音楽と映像の融合が際立つ作品。
残酷と優美が同居する、アルジェントの革新的かつスタイリッシュな演出が光る。
そして映画のラストを飾る驚異的なスローモーション撮影は、圧巻の一言に尽きる。
ロックバンドのドラマー、ロベルトは黒いハットの男に付きまとわれていた。
ある晩、限界に達したロベルトは男に詰め寄るも、揉み合いの末に誤って彼を殺害。
その現場を覆面を被った謎の人物に撮影されてしまう。やがて脅迫電話がロベルトを襲い、彼の周りでは不可解な殺人事件が起こり始める。
監督:ダリオ・アルジェント
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:マイケル・ブランドン、ミムジー・ファーマー、ジャン=ピエール・マリエール
ダリオ・アルジェント Dario Argento
“鮮血の魔術師”とも呼ばれるイタリアン・ホラー界の巨匠。
映画プロデューサーの父親とカメラマンの母親を持ち、幼少から映画製作に興味を抱く。高校時代からホラーやサスペンスに傾倒し、映画雑誌に映画評を投稿、卒業後はローマの新聞「パエーゼ・セーラ」の映画批評を担当する。
セルジオ・レオーネ監督の『ウエスタン』(1968)の原案をベルナルド・ベルトルッチと共同執筆して以降、マカロニ・ウエスタンや戦争映画の脚本を手がけ、1969年の『歓びの毒牙』で監督デビュー。『4匹の蝿』(1971)や『サスペリア PART2』(1975)などの傑作を次々に発表し、1977年の『サスペリア』が全世界的に大ヒットし、ホラー映画の鬼才としての地位を確立した。
その後『インフェルノ』(1980)でハリウッドにも進出、『シャドー』(1982)『フェノミナ』(1984)や『オペラ座 血の喝采』(1988)などの話題作を発表。ジョージ・A・ロメロ監督作『ゾンビ』(1978)の製作にも関与し、「デモンズ」シリーズなどのプロデューサーとしても知られる。
近年も監督最新作となる『ダークグラス』(2022)や初主演作『VOLTEXヴォルテックス』(2021)が劇場公開され、自伝『恐怖』の邦訳が出版されるなど、84歳となる現在もその動向は全世界の映画ファンからの注目を集め続けている。
【ダリオ・アルジェント 動物3部作】
監督:ダリオ・アルジェント
音楽:エンニオ・モリコーネ
提供・配給:キングレコード+Cinemago