優柔不断で、内向的で、自意識過剰な男たち。
奔放で、意地っぱりで、あっけらかんとした女たち。
パリの街角で、南仏のリゾートで、湖畔の避暑地で、
男と女はすれ違い、恋をする。
滑稽であるがゆえに貴く、凡庸であると同時に美しい、男と女の恋模様。のちに、80年代の〈喜劇と格言劇〉シリーズ、90年代の〈四季の物語〉シリーズへと成熟してゆく巨匠エリック・ロメールが、構想10年をかけ、いちばん最初に作りあげた連作が本特集〈六つの教訓話〉です。ふたりの魅力的な女性のあいだで翻弄されながら、運命の愛を求め、ひとりよがりの夢想と葛藤に思い悩む男たちの可笑しさが、6作品揃いました。
さらに〈六つの教訓話〉シリーズに加え、本特集では、「カイエ・デュ・シネマ」誌に映画批評を寄稿しはじめた頃の若きロメールが、ゴダール、シャブロルらと共に撮った才気あふれる短編6作品も上映いたします。
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Fプログラム
【初長編作品】
『獅子座』
(1959年/フランス/モノクロ/103分/Le Signe du Lion)
叔母の莫大な遺産を相続することになった自称作曲家のピエール。派手なパーティを開いたはいいものの、遺産はすべて彼の従弟に行くことが発覚。金の無心をし たくても友人たちはバカンスのため不在、一文無しになったピエールはパリの街をあてもなく彷徨う。ロメールの長編デビュー作にしてヌーヴェルバーグ初期の代表作。クロード・シャブロルがプロデューサーを買って 出て自身の監督作『美しきセルジュ』(1958)で稼いだ 資金を投入したが、興行的には失敗に終わった。
撮影:二コラ・エイエ
出演:ジェス・ハーン、ヴァン・ドード、ミシェル・ジラルドン
【初期の短篇集】
『モンフォーコンの農婦』
(1967年/フランス/スタンダード/カラー/14分)
フランス東部の田舎町モンフォーコンの農場に嫁いだ元教師の女性の日常が、自身のナレーションによって綴られるシネエッセイ。トラクターを運転し、畑を耕し、牛からミルクを搾る農婦としての労働。妻であり母でもある家庭人としての日々の生活。そして村の協議会や組合に参加する共同体の一員としての営み。春夏秋冬、ゆるやかに流れる時間の中、大地に根差した暮らしを、皮肉にも憧憬とも取れる浮遊した眼差しで捉えるロメールの底知れない感性が光る。
出演:モニク・サンドン
agnes b. x UPLINK京都
J’amie le Cinema! – 映画とアニエスベーの深い関係 –