© THE THING WITH FEATHERS LTD / THE BRITISH FILM INSTITUTE / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2025 ALL RIGHTS RESERVED.
日時
3月27日(金)公開
© THE THING WITH FEATHERS LTD / THE BRITISH FILM INSTITUTE / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2025 ALL RIGHTS RESERVED.
3月27日(金)公開
英国が生み出した現代最高の俳優のひとりとして、次々に話題作へのオファーが続いているベネディクト・カンバーバッチ。テレビの人気シリーズ『SHERLOCK(シャーロック)』で爆発的な人気を得て以来、『ドクター・ストレンジ』シリーズや『アベンジャーズ』シリーズなど、ハリウッドの超大作にも出演。その確かな演技力と知的でダンディな魅力で多くのファンを魅了し続け、日本の映画雑誌の人気投票でも常に上位にランキングしている。
過去に『イミテーション・ゲーム』(14)や『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(21)で、アカデミー主演男優賞に2度ノミネートされたが、そんな彼が映画のテーマと監督の熱意に突き動かされ、製作総指揮まで買って出たのが、この最新作『フェザーズ その家に巣食うもの』である。人間の複雑な感情のうねりをドラマティックでありながらも、自然体の演技で見せることができるのがカンバーバッチの強み。今回はほぼ出ずっぱりの役で、今年、50歳を迎え、さらに好調の波に乗る彼の俳優人生の集大成ともいえる奥深い名演を披露。「カンバーバッチは父親役を完璧に演じ、表情や姿勢で脚本では表現しきれない繊細な悲しみを伝える」(PopMatters評)とメディアに絶賛され、チューリッヒ映画祭のゴールデン・アイ賞も受賞している。
カンバーバッチが演じるのは、突然、妻に先立たれたコミック・アーティストの父親役。幼い二人の息子を抱え、慣れない家事にも手をそめ、手探りで新たな生活を始めるが、妻の突然の死からまもないある日、1本の謎の電話がかかってくる。「彼女は逝ったが、私はいる」――その正体不明の男は、その日から彼につきまとい、遂には”クロウ”となって姿を現わす。 彼がコミックとして描く生き物に似た”クロウ”。それは現実なのか、幻なのか? ヤツがもたらすのは、破滅か、それとも再生なのか? 心理ミステリーとダーク・ファンタジーが交錯したスリリングな語り口で物語は進み、雨の夜にすべてが試される瞬間が訪れる。
映画の原作は英国の作家、マックス・ポーターの2015年の小説『悲しみは羽根をまとって』で、ノーベル文学賞受賞の韓国の作家、ハン・ガンが「いびつなほどのぬくもりと美しさを秘めた本」と称賛している。これまで30か国以上の国と地域で翻訳され、全世界で22万部を突破するベストセラーとなり、英国では2016年のディラン・トマス賞を受賞し、2017年のヨーロッパ文学賞も獲得(オランダ語訳の本)。映画化に先立ち、2019年に『オッペンハイマー』のオスカー男優、キリアン・マーフィー主演ですでに舞台化され、アイリッシュ・タイムズ演劇賞の最優秀男優賞も受賞している。
そんな話題の小説を映像化したのは、これまでブラーのドキュメンタリー映画を手がけたことのある期待の新鋭監督のディラン・サザーンで脚色も自身で担当。カンバーバッチも「すばらしい才能の持ち主」とその実力を認めている。演技者としての彼は男の失意の描き方に興味を持って出演を決意したという。監督自身は原作について「長年抱えてきた友人の死の喪失感を癒すきっかけになった」と語っている。あえてCGは使用せず、1980年代のジム・ヘンソンのマペット感覚や敬愛するスタジオジブリ的な解釈も生かし、ゴシック風かつダークで特異なビジュアルと幻想的な世界観を生み出している。幼い子供を残したまま母親が他界し、その悲しみを乗り越えようと奮闘する父親の姿は普遍的な感動を呼ぶだろう。
父子の悲しみがクロウとなって現れるという幻想的かつ不気味な設定にも大きなインパクトがあり、妻を失った主人公の再起への道のりを、光と影に彩られた詩的な映像表現で描き出す監督の並々ならぬ手腕が光る。緊張感あふれるスリラーやホラー、奇妙なダーク・ファンタジーの要素を盛り込みつつ、最後は見る人の心に訴える家族の映画になっている。
クロウの不気味な声を担当しているのは『ハリー・ポッター』シリーズへの出演でも知られる実力派男優のデイヴィッド・シューリス。主人公のふたりの幼い息子役を演じるのは、この映画でデビューを飾った双子のリチャードとヘンリーのボザール兄弟(撮影時は7歳)。父親の元恋人、アマンダ役は『ボイリング・ポイント/沸騰』(21)で評価されたヴィネット・ロビンソン。ポール役は『ミス・シェパードをお手本に』(15)のサム・スプルエル。
製作は『愛はステロイド』(24)のアンドレア・コーンウェルや『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』(25)のリア・クラークとアダム・アクランドが共同で担当。撮影監督は『愛はステロイド』のベン・フォーデスマン、プロダクション・デザインは『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』(24)のスージー・デイヴィーズ、衣装デザインは『キングスマン:ファースト・エージェント』(21)にも参加のソフィー・オニール、ヘア&メイクアップ・デザイナーは『ナイル殺人事件』(22)などケネス・ブラナー作品の常連のロンドン在住の日本人、吉原若菜。劇中、重要な役割を果たすクロウのデザインはニコラ・ヒックス、ドローイングはルーシー・サリヴァンの担当。



突然、妻に先立たれたコミック・アーティストの父(カンバーバッチ)。幼い二人の息子を抱え、慣れない家事にも手をそめ、手探りで新たな生活を始めようとしていたある日、1本の謎の電話がかかってくる。「彼女は逝ったが、私はいる」――その正体不明の男は、その日から父につきまとい、遂には “カラス(クロウ)”となって姿を現わす。彼がコミックとして描く生き物に似た”クロウ”。それは現実なのか、幻なのか?最後に父が遭遇する衝撃の真実とは……?
<DAD 父>
その朝、父は慣れない手つきで朝食を作り、子供たちが学校に行く準備を整える。学校では教師にお悔やみの言葉を受ける。帰宅後は友人がやってきて、父を慰める。夜になると、息子たちに童話を読む父。
留守電には知人たちの慰めのメッセージが残されていたが、そこには聞きなれない男の不気味な声も残されていた――「彼女は逝ったが、ここに私はいる」。やがて、部屋には黒い鳥(クロウ)が現れる。動揺した父は鉛筆を削り、誤ってケガする。床に血が広がり、それを見た彼は床に倒れた妻の最後の姿を思い出す。父がクロウの鳴き声を聞くと、息子が家の中に羽があったことを告げる。やがて何者かがドアのベルを鳴らすが、外には誰もいない。その次の日、次男が家に何者かがいて、クロウの声が聞こえたと言い出す。
<CROW クロウ>
部屋に不審な声が鳴り響く――「妻が息絶える1時間前に戻すこともできるんだ」。それはヤツの声だった。翌日、息子たちに起こされるが、やがて、「私の興味をひく人間は多くはない」と再び不気味な声が聞こえてくる。
それから数カ月。精神科医のところに行った父は医師から「自分の悲しみを隠してはいけない」と告げられる。その後、スーパーに行くと、そこでもヤツの声が聞こえる――「悲しい父親だな」。「お前は幻想だ」と父は叫ぶが、そこには何者かが立っていた。
父の弟が子供たちを預かり、家でクロウの絵を描く父の前に再び声が響く――「頭に浮かんだ物語を描け!」。その時、インクがこぼれて、紙の上に黒い色が広がる。父はある雪の日を思い出す。妻が病で倒れ、彼は息子たちを連れて外に出る。それが今に至る人生の予行練習だったことにも気がつく。その時、クロウらしき鳥が、すでに後にいる。
父は昔の恋人、アマンダとも再会し、「あなたたち夫婦は一緒になる運命だった」といわれ、妻との時間に思いをはせる。その夜、音楽を聞いていると、再びヤツの人のあざけるような声が聞こえる。これは現実なのか、それとも幻なのか?
<BOYS 子供たち>
子供たちは大好きだったママのことを思い出す――「ママはいい匂いがして、大音量で音楽を聞いていた」。そして、ハロウィンの時の思いもよみがえる。それを「甘ったるい幻想」と言い放つヤツの声が聞こえる。その男に「息子たちに優しくしてくれ」と父は頼む。
クロウは父の言葉を受け入れ、息子たちにゲームを持ちかける。「君だけのママの姿を作れ。ふたりのうち、勝った方のママを蘇らせよう」。その声に従い、子どもたちは部屋にある小道具を作って、母親の姿を蘇らせようとする。しかし、ゲームが終わった後、母親は2度と戻らないことを改めて悟る。クロウはペテン師なのか?
クリスマスになると、妻の両親に家に行き、食事会に参加する父と子供たち。ふたりを温かく歓迎し、母親の若かった頃の話をする両親。父は祖母と昔のアルバムを見る。ふたりの子供たちは外に出て、木に上る。そこにもクロウが現れ、子供たちはそれを捕まえようとするが、ひとりはケガをしてしまう。
<THE DEMON 悪魔>
父の本の仕事は順調に進んでいるが、ヤツの声は止まらない――「なんて父親だ。自分を憐れんで」。その声を聞いた父は廊下で叫ぶ――「やめてくれ!」。その夜、外では激しい雨が降っている。そして、ドアのベルが鳴り、不審な男の声がする。「56番地のサイモンだが、牛乳を分けてほしい」。しかし、父はドアを開けることはない。56番地は地図にない場所だからだ。
次に現れたのがダンという名前の男――「あなたの本の担当者だ」と彼はいうが、父は男を疑い、ドアを開けることはなかった。次にやってきたのは警察官で「5つ数えたら入るぞ。お前と話したい人がいる」。すると、そこには死んだ妻そっくりの女性が立っている。「戻ったのよ。ここを開けて!」。その声に動揺する父。覚悟を決めてドアを開けようとする。それはヤツが仕掛けた罠なのか、それとも……!? 目の前には信じられない光景が広がっていた。




『フェザーズ その家に巣食うもの』The Thing with Feathers
(2025年/イギリス/英語/98分/G)
監督・脚本:ディラン・サザーン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ(『ドクター・ストレンジ』シリーズ、『アベンジャーズ』シリーズ、「SHERLOCK(シャーロック)」シリーズ)
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム