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1月30日(金)公開
1月30日(金)公開
2023年サウス・バイ・サウスウエスト(SWSX)映画祭のコンペティションでスクリーンデビューを果たした本作は、コペンハーゲンのCPH:DOXでNext:Wave賞を受賞、カムデン映画祭でThe Audience Awardを受賞、ドキュメンタリーのアカデミー賞とも言われている2024年IDAドキュメンタリー賞で最優秀撮影賞を受賞するなど、世界各地の映画祭で数々の栄誉に輝いた。さらに、アメリカの映画批評サイトRotten Tomatoesでは批評家支持率100%という驚異的なスコアを記録。「息を呑むほど美しい」「途方もない勇気の作品」「痛烈で生々しい」「最高のドキュメンタリー」と、圧倒的な称賛を受けている。
本作の監督アグニア・ガルダノヴァは、ジェナの持つ類まれな芸術性と、またロシアという抑圧的な社会の中で真の自分を貫く勇気に深く心を動かされ、本作の製作を決意した。ジェナは本作で、アートの限界を押し広げ、自らを愛することの強さと必要性を、静かに、そして力強く訴えかけている。
ロシアの小さな町で育ったクィア・アーティスト、ジェナの過激で独特な衣装を纏った姿は芸術的でありながらも、ウクライナ侵攻への反対や、LGBTQ+の活動を禁止する法律や政治、社会に対する反抗的な姿勢を表している。このパフォーマンスは、現在のロシアでは命を危険にさらす行為だ。それでもジェナは、自らの存在をかけてアートを通じて抗議を続け、社会の無関心と差別に一石を投じている。
だが、本作が映し出すのは、そんな“強さ”だけではない。まだ若く、将来への不安や自己との葛藤を抱えるジェナの姿、そして、愛情を抱きながらもその在り方を理解しきれない祖父母との関係。そこには、多くの人が共感できる“世代間のすれ違い”が浮かび上がる。
学校を追われ、家族との軋轢に悩み、自分自身とも闘い続けるジェナが、人として、そしてアーティストとして花開き、変化していく姿に、私たちはきっと心を動かされ、応援せずにはいられない。
2022年2月24日、ロシアがウクライナへの全面的な軍事侵攻を開始した。本作を撮影中だったジェナは沈黙を選ばず、この戦争への抗議を示すため、公共の場でパフォーマンスを行うことを決意する。裸の体に有刺鉄線を巻き、凍えるモスクワの街を歩いたその姿は、まさに命がけの訴えであった。その結果、ジェナは逮捕される。
やがて迫る徴兵の危機。戦争の魔の手が日常に忍び寄る中、ジェナが下した決断とは?この作品は、個人の表現と自由、そして命の尊厳を賭けた選択を描いた、静かで激しい抵抗の記録でもある。
逮捕、排除、そして沈黙の強制──
そのすべてを背負いながら、それでも前へ進む。
恐怖と絶望を超え、痛みと美しさを纏って、“孤高のクイーン”は誕生する。
LGBTQ+の活動や表現が法律で禁じられているロシアに突如現れたクィア・アーティスト、21歳のジェナ・マービン。首都モスクワから約10,000キロ離れた極寒の町で祖父母に育てられたジェナは、幼い頃から自身がクィアであると認識しており、小さな町ではその存在が暴力の標的となった。ロシアではLGBTQ+は「存在しないもの」とされ、その当事者たちは日々、差別と抑圧にさらされている。その痛みとトラウマを、ジェナはアートへと変えた。スキンヘッドにハイヒール、身体を締め上げるテープや有刺鉄線をまとい、“静かな叫び”として無言のパフォーマンスを街に放つ。
やがて、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発。反戦デモに参加したジェナは逮捕され、徴兵の危機にさらされる。
逮捕、嫌がらせ、社会からの排除――。それら全てを背負い、恐怖と絶望を超えた孤高のクイーンが誕生する。これは、痛みと美しさを纏ったひとりのアーティストによる、命をかけた表現の記録。

『クイーンダム/誕生』QUEENDOM
(2023年/フランス、アメリカ/ロシア語/91分/シネスコ/カラー/5.1ch)
監督:アグニア・ガルダノヴァ
製作:イゴール・ミャコチン、アグニア・ガルダノヴァ
主演:ジェナ・マービン
日本語字幕:浅野倫子
配給:Elles Films