日記 父と母へ【メーサーロシュ・マールタ監督特集 第2章】 Napló apámnak, anyámnak/Diary for My Father and Mother
(c) National Film Institute Hungary - Film Archive
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1956年10月23日、ブダペシュトで民衆が蜂起する。モスクワで足止めを食っていたユリは、12月に入りようやくハンガリーへの帰国を許された。
ユリはカメラを手に、荒廃した街並みや犠牲者を見つめていく。その年の大晦日、ユリたちは一堂に会する。
政治的立場を異にする者たちも、仮装や音楽、ダンスに耽る。しかし反動分子の弾圧はとどまるところを知らず・・・・・・。
『日記 父と母へ』 Napló apámnak, anyámnak/Diary for My Father and Mother
(1990年/ハンガリー/スタンダード/カラー・モノクロ/117分/2Kレストア/G)
監督:メーサーロシュ・マールタ
出演:ツィンコーツィ・ジュジャ、ヤン・ノヴィツキ、トゥルーチク・マリ
脚本:メーサーロシュ・マールタ、パタキ・エーヴァ
撮影:ヤンチョー・ニカ
字幕翻訳:森彩子
字幕監修:コロンツァイ・バーバラ、秋山晋吾
青春、家族、恋愛、冷戦・・・・・・個人的な記憶と
戦後ハンガリーの歴史が交錯した、深遠なる記録の数々。
デビュー作から代表連作まで、新たにレストアされた作品群が、日本初劇場公開。
1975年、『アダプション/ある母と娘の記録』で、女性監督として初めてベルリン国際映画祭の最高賞を受賞したメーサーロシュ・マールタ。2023年、同作を含む5作品が日本でもようやく公開された。
今回の特集では、メーサーロシュの代表連作「日記」三部作を含む7作品を新たにラインナップ。
孤児として育った女性が両親を追い求めるデビュー作『エルジ』、中年の危機に瀕した未亡人の息苦しさをシスターフッド的に描破した『月が沈むとき』、階級格差が男女の結び付きを蝕む『リダンス』など、初期作品には「家族」の有り様を洞察するメーサーロシュの作家性が光る。アンナ・カリーナを共演に迎えた中期の傑作『ジャスト・ライク・アット・ホーム』では、血の繋がらない男と少女の、親子のような親密さにカメラが向けられ、やはりここでも「家族」の形が問い直される。
そして「日記」三部作には、冷戦下の恐怖政治を生き抜いた、メーサーロシュ自身の記憶が刻まれている。軍靴が耳をつんざくなか、生き別れた両親への思いがこだまするパーソナルな一大叙事詩が、ついにその全貌を現す。
メーサーロシュ・マールタ
1931年、ハンガリー生まれ。同国を代表する名匠ヤンチョー・ミクローシュの手引きで、長編劇映画デビュー作となる『エルジ』を監督。当時ヤンチョーとは配偶関係にあり、彼の息子ヤンチョー・ニカはその後、「日記」三部作の撮影監督を務めることになる。
監督作には、サボー・ラースロー(ラズロ・サボ)やアンナ・カリーナ、イザベル・ユペール、デルフィーヌ・セリッグなどの名優がこぞって出演し、アニエス・ヴァルダに至っては自身の映画制作の参考にするなど、その影響は計り知れない。

【メーサーロシュ・マールタ監督特集 第2章】