
©TBS
©TBS
当時この番組は、若手ディレクターの登竜門だった。今回は弱冠20代の実相寺が演出した全6作品を上映。実相寺が個人所蔵していたために上映が実現した貴重な作品もある。
第212話「さらばルイジアナ」(デジタル修復版)
(1963年2月14日放送/30分)
主演・原知佐子。目元、口元、オペラ…実相寺演出が炸裂する鮮烈な人間ドラマ
神学校の寮を舞台に、学生と若く美しい義母の関係が鮮烈に描かれるこの作品が、後に妻となる原知佐子との初仕事だった。フィルム、VTR、生放送ブロックが混在し、当時のテレビドラマの在り方を伝える意味でも貴重。川津は緊張と興奮のあまり台詞を忘れ、鎮静剤を打って生放送に臨んだそうだ。
脚本:田村孟
出演:原知佐子、川津祐介
音楽:八木正生
第236話「汗」(デジタル修復版)
(1963年8月8日放送/30分)
音楽番組風のセットで臨んだ、姉妹の強烈な愛憎劇
堅実に生きる姉と破天荒な妹の対立を、団地を舞台に繰り広げる人間ドラマ。一部ロケ映像を含んだ生放送のスタジオドラマだが、音楽番組のようなセットを組んで様式美・実験的なスタイルを貫いている。「坂本九ショー」と見比べると、当時実相寺はドラム缶がお気に入りだったこともわかって面白い。
脚本:恩地日出夫
出演:稲垣美穂子、加賀まりこ
『ウルトラマン』などの特撮作品やATG映画、CM、オペラまで手掛け、その美学と感性で唯一無二の存在感を放った奇才。そんなクールな印象の彼も、デビューしたての20代若手社員の頃は、作品の度に異なる演出スタイルを試みる青臭いまでに熱い青年だった。今回はそんな“青の時代”に実相寺が手掛けた、ドラマ、音楽番組、ドキュメンタリーの計8作品を、60年の時を経てスクリーンに蘇らせる。
「テレビ」というメディアの在り方が様々な角度から問われている今だからこそ、その黎明期に息づいていた「ものづくりへの熱量」を振り返ることに意味があるはず。そこで私は昨年から、独断と偏見でフィルムを掘り出しデジタル修復して再発表する「TBSレトロスペクティブ映画祭」を企画した。
第2回は、実相寺昭雄特集。いまや特撮ファンから神格化されている彼にも、まだ何者でもない時代があった。「電気紙芝居」と揶揄され映画に比べはるかに地位の低かったテレビいう場をあえて選び、試行錯誤を繰り返していた昭和の若者の熱い志を、令和のいま改めてスクリーンで堪能して欲しい。
TBSレトロスペクティブ映画祭企画 映画監督 佐井大紀
【第2回TBSレトロスペクティブ映画祭 実相寺昭雄特集】
(2025年/日本)
プロデュース:佐井大紀
エグゼクティブ・プロデューサー:津村有紀
総合プロデューサー:松田崇裕、小池博
協力プロデューサー:青木基晃、石山成人
テクニカル・マネージャー:宮崎慶太
アーカイブ・マネージャー:崎山敏也、古山徹
企画:大久保竜
協力:実相寺昭雄研究会