
©TBS
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当時この番組は、若手ディレクターの登竜門だった。今回は弱冠20代の実相寺が演出した全6作品を上映。実相寺が個人所蔵していたために上映が実現した貴重な作品もある。
第190話「あつまり」(デジタル修復版)
(1962年9月13日放送/30分)
鳴り響くジャズと躍動的な映像で時代を切り取った、和製ヌーヴェル・ヴァーグ
ブルジョアの若者たちは夜な夜な集まり、親の金で酒や睡眠薬に耽り退廃的に過ごしていた。その中で、自身で生活費を稼いでいた女性モデルが妊娠、恋人に結婚を迫るが「堕ろせ」と一蹴される。『京都買います』の斉藤チヤ子と、若き日の田村正和のシリアスな演技にも注目。
脚本:田中堅太郎
出演:斉藤チヤ子、田村正和
第207話「鏡の中の鏡」(デジタル修復版)
(1963年1月10日放送/30分)
美術や画面構図を駆使して観念を表現する、実相寺アングルの原点
女優の美年子は自らを束縛する父に対して、今は亡き元女優の母の身代わりを演じさせないで欲しいと反発する。継母との関係や腹違いの兄との出会いから、彼女は自らのアイデンティティを模索していく。観念的なテーマを、異様に細長い食卓や鏡合わせを駆使して演出する実相寺の手腕が光る。
脚本:須川栄三
出演:朝丘雪路、和田周
『ウルトラマン』などの特撮作品やATG映画、CM、オペラまで手掛け、その美学と感性で唯一無二の存在感を放った奇才。そんなクールな印象の彼も、デビューしたての20代若手社員の頃は、作品の度に異なる演出スタイルを試みる青臭いまでに熱い青年だった。今回はそんな“青の時代”に実相寺が手掛けた、ドラマ、音楽番組、ドキュメンタリーの計8作品を、60年の時を経てスクリーンに蘇らせる。
「テレビ」というメディアの在り方が様々な角度から問われている今だからこそ、その黎明期に息づいていた「ものづくりへの熱量」を振り返ることに意味があるはず。そこで私は昨年から、独断と偏見でフィルムを掘り出しデジタル修復して再発表する「TBSレトロスペクティブ映画祭」を企画した。
第2回は、実相寺昭雄特集。いまや特撮ファンから神格化されている彼にも、まだ何者でもない時代があった。「電気紙芝居」と揶揄され映画に比べはるかに地位の低かったテレビいう場をあえて選び、試行錯誤を繰り返していた昭和の若者の熱い志を、令和のいま改めてスクリーンで堪能して欲しい。
TBSレトロスペクティブ映画祭企画 映画監督 佐井大紀
【第2回TBSレトロスペクティブ映画祭 実相寺昭雄特集】
(2025年/日本)
プロデュース:佐井大紀
エグゼクティブ・プロデューサー:津村有紀
総合プロデューサー:松田崇裕、小池博
協力プロデューサー:青木基晃、石山成人
テクニカル・マネージャー:宮崎慶太
アーカイブ・マネージャー:崎山敏也、古山徹
企画:大久保竜
協力:実相寺昭雄研究会