
©TBS
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当時この番組は、若手ディレクターの登竜門だった。今回は弱冠20代の実相寺が演出した全6作品を上映。実相寺が個人所蔵していたために上映が実現した貴重な作品もある。
第178話「あなたを呼ぶ声」(デジタル修復版)
(1962年6月14日放送/30分)
脚本・大島渚。25歳の実相寺による記念すべきドラマ初演出作品
産婦人科で妊娠を告げられた主人公は、その帰り道見知らぬ貧しい少年に「お母さん」と呼ばれ、彼の世話をかいがいしく焼き始める。『愛と希望の街』に感激した実相寺が大島に脚本を依頼、大島からは酷評されるも、冒頭の長回しから実相寺らしい技巧的演出が光る。
脚本:大島渚
出演:池内淳子、戸浦六宏
第184話「生きる」(デジタル修復版)
(1962年8月2日放送/30分)
後の実相寺組常連が集結、セット撮影の技巧が光るドタバタコメディ
貧乏アパートに囲われた二号の娘と、それにすがる強欲な母。そこに隣人の学生やヒモも絡み、感情むき出しのコメディが展開する。隣接する部屋のセットを縦横無尽にカメラが動き、独特の劇的空間が演出されている。石堂淑朗、冬木透、原保美と、後の実相寺組の常連たちが早くも集結。
脚本:石堂淑朗
出演:菅井きん、原保美、
音楽:冬木透
『ウルトラマン』などの特撮作品やATG映画、CM、オペラまで手掛け、その美学と感性で唯一無二の存在感を放った奇才。そんなクールな印象の彼も、デビューしたての20代若手社員の頃は、作品の度に異なる演出スタイルを試みる青臭いまでに熱い青年だった。今回はそんな“青の時代”に実相寺が手掛けた、ドラマ、音楽番組、ドキュメンタリーの計8作品を、60年の時を経てスクリーンに蘇らせる。
「テレビ」というメディアの在り方が様々な角度から問われている今だからこそ、その黎明期に息づいていた「ものづくりへの熱量」を振り返ることに意味があるはず。そこで私は昨年から、独断と偏見でフィルムを掘り出しデジタル修復して再発表する「TBSレトロスペクティブ映画祭」を企画した。
第2回は、実相寺昭雄特集。いまや特撮ファンから神格化されている彼にも、まだ何者でもない時代があった。「電気紙芝居」と揶揄され映画に比べはるかに地位の低かったテレビいう場をあえて選び、試行錯誤を繰り返していた昭和の若者の熱い志を、令和のいま改めてスクリーンで堪能して欲しい。
TBSレトロスペクティブ映画祭企画 映画監督 佐井大紀
【第2回TBSレトロスペクティブ映画祭 実相寺昭雄特集】
(2025年/日本)
プロデュース:佐井大紀
エグゼクティブ・プロデューサー:津村有紀
総合プロデューサー:松田崇裕、小池博
協力プロデューサー:青木基晃、石山成人
テクニカル・マネージャー:宮崎慶太
アーカイブ・マネージャー:崎山敏也、古山徹
企画:大久保竜
協力:実相寺昭雄研究会