
©Nara International Film Festival+MOCUSHURA
©Nara International Film Festival+MOCUSHURA
03.15土
11:20—13:00
【予告3分】
03.17月
11:20—13:00
【予告3分】
03.19水
11:20—13:00
【予告3分】【水曜サービスデー¥1,300】
第19回釜山国際映画祭 監督組合賞(2014年)
第40回ソウル独立映画祭 スペシャルメンション(2014年)
第3回茂朱山里映画祭 ニュービジョン賞&全北批評家フォーラム賞(2015年)
第35回韓国映画評論家協会賞 FIPRESCI韓国本部祭賞(2015年)
第16回釜山映画評論家協会賞 最優秀脚本賞(2015年)
第3回ワイルドフラワー映画賞 撮影賞(2015年)
第16回Asiatica Film Mediale 最優秀劇映画賞(2015年)
なら国際映画祭が若手監督を招き、奈良を舞台に映画を製作するプロジェクトNARAtive2014の作品として完成した本作。映画は2部形式で、モノクロで撮影された第1章では奈良県五條市を訪れた韓国の映画監督と助手が市の職員と共に街を歩きながら市民に話をきいていく。第2章は、1章で助手と職員を演じたキム・セビョクと岩瀬亮が、旅行で同市を訪れた女性ヘジョンと地元の青年・友助に扮したラブストーリー。当初、第1章のみの予定で進んでいた撮影を急遽、変更し「同じ俳優、同じ場所でどうすれば違うものを作ることができるのか、それを考えながらその場で作り出していった」という第2章は、前作の「眠れぬ夜」と同様、事前に脚本を書かず、俳優たちとのやりとりの中でセリフが生み出されていった。撮影が進むにつれて親しくなっていったというキム・セビョクと岩瀬亮の関係の変化が画面からも感じられる。
釜山国際映画祭をはじめとする国内外の映画祭での好評を受けて15年6月に公開された韓国では、インディペンデント映画としては異例の3万人以上の観客を動員。映画雑誌「シネ21」が選ぶ「今年の映画」でも、ホン・サンス監督の「正しい日 間違えた日」に続く第2位にランクインした。さらに、2024年11月、ソウル独立映画祭が第50回を記念した発表した「歴代インディペンデント映画ベスト10」の1本にも選ばれた。チャン・ゴンジェ監督の代表作であると共に、韓国インディペンデント映画史に残る作品といえるだろう。
第1章 初恋、よしこ
奈良県五條市にある古びた喫茶店で言葉を交わし合う地元の人々の姿を見ながらメモをしている映画監督テフン(イム・ヒョングク)。彼はこの街で映画を撮るためにシナリオ・ハンティングにやってきたのだった。日本語が堪能な助手のミジョン(キム・セビョク)とともに観光課の職員・武田(岩瀬亮)と会ったテフンは彼の案内で街を歩く。途中、自分自身の話を聞かれた武田は、韓国からの旅行者との思い出や、役者になりたかった頃のことを語り出す。その夜、夕食を食べながら手応えがあったとミジョンに話すテフン。翌日、山間の村・篠原へと連れてきてもらったテフンたちは住民たちから昔の村の様子を聞く。廃校になって久しい小学校にやってきたテフンは、地元の人ケンジ(康すおん)から聞いた初恋の相手よしこの話に強い印象を受ける。
第2章 桜井戸
奈良県五條市に旅行でやってきたヘジョン(キム・セビョク)。駅の案内所に立ち寄った彼女は地元の男性・友助(岩瀬亮)から声をかけられる。やや強引に彼女の道案内を始めた友助は桜井戸の伝説を彼女に語る。半分デタラメな彼の説明を聞いて笑うヘジョン。昼食をとりながら五條の印象を聞く友助に「なにもないことがよかった」とヘジョンは答える。父の生まれ故郷である篠原に連れて行くという友助の申し出を一度は断ったヘジョンだが、結局、翌日、彼の車で向かうことになる。静かな村で時間を過ごすうちにふたりの距離は少しずつ近づいていく。
『ひと夏のファンタジア』 한여름의 판타지아/A Midsummer’s Fantasia
(2014年/96分)
監督・脚本:チャン・ゴンジェ
出演:キム・セビョク、岩瀬亮
最新作「ケナは韓国が嫌いで」が公開となるチャン・ゴンジェ監督。
2009年に発表した「十八才」はロッテルダム、香港など12を超える国際映画祭に招待された。それまでにない感覚を持つ新世代の監督の誕生は、韓国のインディペンデント映画界におけるひとつの“事件”となった。
第3作「ひと夏のファンタジア」(2014)は、韓国でインディペンデント映画としては異例の3万人以上の観客を集め、チャン・ゴンジェ監督への注目度もアップ。
「十八才」、第2作「眠れぬ夜」(2012)で撮られたのは“自分自身”ということ。「十八才」では自分自身をモデルとし、「眠れぬ夜」では30代だった自分と妻の関係に目を向けた。
「ひと夏のファンタジア」では、モノクロとカラー、ノンフィクションとフィクションの融合という新たな形式を生み出し、映画は幻想性を纏った。その手法は2時間の間に演劇を入れ込むことで主人公の現在と夫婦の過去を並行して描いた「5時から7時までのジュヒ」(2022)にも表れている。
俳優、撮影、監督、プロデューサーと、様々な立場で映画にかかわってきたチャン・ゴンジェ。
現在の彼は「プロフェッショナルとしていい作品を作りたいという気持ちが強い」と語る。もちろん、彼はすでにデビュー作「十八才」から、独自の美学とリズムを持った映画作家であり、恋愛と結婚という普遍的なテーマを、リアルでありながらも幻想的な手法で見せてきた。
最新作の「ケナは韓国が嫌いで」は2023年の釜山国際映画祭のオープニングを飾るなど、インディペンデント作家のトップランナーとして、キャリアの可能性を開拓し続けている。今回、その軌跡が日本ではじめて辿られる。
【映画監督チャン・ゴンジェ 時の記憶と物語の狭間で】
配給:A PEOPLE CINEMA/chocolat studio