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十八才【映画監督チャン・ゴンジェ 時の記憶と物語の狭間で】 회오리 바람/Eighteen

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スケジュールとチケット SCHEDULE & TICKETS

03.14

詳細 DETAIL

第28回バンクーバー国際映画祭ドラゴン&タイガーズ・アワード・フォー・ヤングシネマ受賞(2009)
第35回ソウル独立映画祭独立映画スター賞(ソ・ジュニョン)(2009)
第46回ペーザロ国際映画祭ニューシネマ大賞(2010)
第1回アナハイム国際映画賞最優秀作品賞(2010)

チャン・ゴンジェ監督待望の長編デビュー作、
「自分の物語」を普遍的なものへと開いていく。

98年から短編作品で注目されてきたチャン・ゴンジェ監督待望の長編デビュー作。多くのアジア映画を世界に紹介してきたイギリスの映画評論家トニー・レインズが「この場面を見るだけで、この映画を作った人が映画言語をきちんと理解していると感じられる」と評した印象的なシーンから始まるこの映画は、自らの経験をベースに、受験一辺倒の高校生活の中で、家族たちの反対を受けながらも同級生との恋愛を続けようとする主人公の姿を瑞々しく描く。主人公のガールフレンド、彼らの母親たちといった女性キャラクターに対する洞察力のある視線も、後の作品にも見られるチャン・ゴンジェらしさと言えるだろう。「自分の物語」を普遍的なものへと開いていく作家としての力を存分に発揮している。
韓国映画振興委員会、ソウル・フィルムコミッション、京畿フィルムコミッションからの支援を得て製作されたこの作品は2008年1月から3月にかけて撮影された。主人公テフン役には、多くの俳優をオーディションした末に出会った子役出身のソ・ジュニョンを起用。平凡な高校生の持つ複雑さを自然に演じた彼はソウル独立映画祭独立映画スター賞に選ばれた。また、現在では『破墓/パミョ』(24)をはじめ数々の大作映画を手がける作曲家となったキム・テソンが音楽を担当している。ちなみに原題の『회오리 바람(つむじ風)』はフランソワ・トリュフォー監督の「突然炎のごとく」(62)の中でヒロインが歌う曲からとられており、主人公たちが口ずさむハミングのメロディーにもその影響が見られる。

【STORY】

高校2年生の冬休みを迎えたテフン(ソ・ジュニョン)とミジョン(イ・ミンジ)。
付き合って100日目を記念して家族にも黙って海辺の街へ旅行に出かけたふたりは楽しいときを過ごすが、帰宅直後、テフンは両親とともにミジョンの家へと呼び出される。
旅行先での出来事を問いただしているうちに逆上するミジョンの父。翌日、再びミジョンの家を訪れたテフンは、大学に入るまでミジョンとは会わないという誓約書を書かされる。しかし、ふたりきりになるとミジョンは、決して別れることはないと彼に告げる。
行きつけのインターネットカフェで料金をめぐってトラブルを起こし、一方的に暴力をふるわれるテフン。ミジョンとも連絡がとれず、ついに家まで会いにいくが、彼女は帰ってほしいと言うばかりだった。
中華料理店で出前のアルバイトを始めるテフン。出前の途中でミジョンの乗っている車を見つけた彼はあとをつけ、彼女の通う予備校を見つける。ようやくミジョンに会えたテフンだったが彼女の態度は冷たかった。
出前先のマンションで住民からの苦情を受けるテフン。イラつく気持ちを抑えられないままバイクを飛ばしていた彼は交差点で歩行者と事故を起こしてしまう。無免許だったため保険での処理ができず、アルバイト先もクビに。手元に残ったわずかなアルバイト代でミジョンに贈るプレゼントを買うが、予備校に行っても彼女に会うことはできない。
その後、担任に呼び出され久しぶりに高校に行ったテフンだが、すぐに抜け出してしまう。

『十八才』劇場初公開 회오리 바람/Eighteen
(2009年/95分)

監督・脚本:チャン・ゴンジェ
出演:ソ・ジュニョン、イ・ミンジ


孤高のインディペンデント作家が描く
“自分の物語”と“越境していく時間”

最新作「ケナは韓国が嫌いで」が公開となるチャン・ゴンジェ監督。
2009年に発表した「十八才」はロッテルダム、香港など12を超える国際映画祭に招待された。それまでにない感覚を持つ新世代の監督の誕生は、韓国のインディペンデント映画界におけるひとつの“事件”となった。
第3作「ひと夏のファンタジア」(2014)は、韓国でインディペンデント映画としては異例の3万人以上の観客を集め、チャン・ゴンジェ監督への注目度もアップ。
「十八才」、第2作「眠れぬ夜」(2012)で撮られたのは“自分自身”ということ。「十八才」では自分自身をモデルとし、「眠れぬ夜」では30代だった自分と妻の関係に目を向けた。
「ひと夏のファンタジア」では、モノクロとカラー、ノンフィクションとフィクションの融合という新たな形式を生み出し、映画は幻想性を纏った。その手法は2時間の間に演劇を入れ込むことで主人公の現在と夫婦の過去を並行して描いた「5時から7時までのジュヒ」(2022)にも表れている。

俳優、撮影、監督、プロデューサーと、様々な立場で映画にかかわってきたチャン・ゴンジェ。
現在の彼は「プロフェッショナルとしていい作品を作りたいという気持ちが強い」と語る。もちろん、彼はすでにデビュー作「十八才」から、独自の美学とリズムを持った映画作家であり、恋愛と結婚という普遍的なテーマを、リアルでありながらも幻想的な手法で見せてきた。
最新作の「ケナは韓国が嫌いで」は2023年の釜山国際映画祭のオープニングを飾るなど、インディペンデント作家のトップランナーとして、キャリアの可能性を開拓し続けている。今回、その軌跡が日本ではじめて辿られる。

【映画監督チャン・ゴンジェ 時の記憶と物語の狭間で】
配給:A PEOPLE CINEMA/chocolat studio