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2月21日(金)公開
2月21日(金)公開
芥川賞作家・中村文則による原作、今や注目度No.1の俳優・瀧内公美の卓越した演技力、そのふたりの才能の参加を得て映画界に半世紀近く携わる奥山和由が常識を覆す演出方法で仕上げた。
この映画、観客は観終わってもしばらくの間、美しい映像や劇中のサブリミナル音に支配される。そして耳に残る印象的なピエロの口笛。きっと多くの人は映画から解放された後、いつの間にかそのメロディーを口ずさんでしまうだろう。女の語る半生は人の道を踏み外した悲惨な話でありながら、どこか心地良さすら感じてしまうのだ。そして、気がつくと自分に何が起こっても大したことではない、いずれ少しは幸せになれるはずという気がしてしまう。それは理屈抜きの映画的マジックだろうか。
スタッフは『RAMPO』以来約30年ぶりに監督を務めた奥山和由のもとに、「鎌倉殿の13人」などの撮影監督・戸田義久、美術の名匠・部谷京子、『ミッドナイトスワン』などの録音・伊藤裕規、『PERFECT DAYS』などの音響効果・大塚智子 等、日本映画を代表するスタッフが集結。それに加え、衣装のミハイル ギニス アオヤマ(ギリシャ)をはじめ、編集・陳詩婷(台湾)、ヘアメイク・董氷(中国)と国際色豊かなチームとなっている。
また、精神科医と主人公の関係の象徴の如き大きな絵画が冒頭から最後まで印象的に映り込んでいる。描く画家が絵に収まってしまい、それを逆に見つめる裸婦という逆転の構図。これは「真実」という標題の後藤又兵衛の原画である。後藤は日本では不遇の画家だったが、それに比して海外では圧倒的に高い評価を得ており、彼の絵の熱心なコレクターとしてハリー・ベラフォンテ、エルヴィス・プレスリー、フランク・シナトラなど歴史に名を残す錚々たるアーティスト達が名前を連ねている。
そして、全編を彩るピエロの口笛のメロディーは芸術文化功労賞受賞者であり国際口笛大会(IWC)での優勝歴を持つ加藤万里奈が担当した。
一流のスタッフ、アーティストによって生まれた、かつてない実験的な自主映画、そういう不思議な映画だ。百聞は一見にしかず、としか表現のしようがない、本当に困った映画だ。
ひとりの女が街の人混みのなかを歩く、まるで糸の切れた風船のように。
生きることすら危うさを感じるその女は一件の館にたどり着く。
女は思い出す、以前に何回か訪ね診てもらった精神科医院だ。人の気配はないがドアは開く。
静けさが待ち受けている。医師は今でもどこかにいるのか?
女は部屋の空洞に吸い込まれるように中に入っていく。そして以前と同じ様に患者が座る
リクライニングチェアに身を横たえる。
目の前にあるピエロの人形に見つめられているようだ。
「火の、、、火の話から始めることにします」
幼少の頃、カーテンに放った火て起こった事件から話し始める。
そして、、、「今日は、全部話す」と。
『奇麗な、悪』 OCCUPIED CITY
(2024年/日本/G)
原作:中村文則(「火」(河出文庫『銃』収録))
主演:瀧内公美
脚本・監督:奥山和由
製作:チームオクヤマ/よしもと総合ファンド/シー・アンド・アール/RON/ナカチカ
プロデューサー:豊里泰宏
音楽:加藤万里奈
撮影監督:戸田義久
照明:中村晋平
録音:伊藤裕規
美術:部谷京子
編集:陳詩婷
音響効果:大塚智子
衣裳デザイン:ミハイルギニスアオヤマ
ヘアメイク:董氷
劇中絵画「真実」後藤又兵衛
制作協力:シンクイ
制作プロダクション:チームオクヤマ
配給:NAKACHIKA PICTURES