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アット・ザ・ベンチ AT THE BENCH

12月27日(金)公開

©2024 Yoshiyuki Okuyama/Spoon Inc, All Rights Reserved.

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12月27日(金)公開

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1つの場所にまつわる5

変わりゆく景色の中で、変わらずそこにあるベンチ。
哀愁感ただようベンチだけを舞台に、四季折々、ある日のある人たちの、
ちょっとした思い出の時間を紡ぎだす。


川沿いの芝⽣の中に⼀つの⼩さなベンチが佇んでいる。
ある⽇の⼣⽅、そのベンチには久しぶりに再会する幼馴染の男⼥が座っている。
彼らは⼩さなベンチで、どこかもどかしいけれど、愛おしくて優しい⾔葉を交わしていく。
この場所には他にも様々な⼈々がやってくる。別れ話をするカップルとそこに割り込むおじさん、家出をしてホームレスになった姉とそんな姉を探しにやってきた妹、ベンチの撤去を計画する役所の職員たち。
⼀つのベンチを舞台に、様々な⼈々のちょっとした⽇常を切り取るオムニバス⻑編作品。


第1編第5編広瀬すず仲野太賀

第2編岸井ゆきの岡山天音荒川良々

第3編今田美桜森七菜

第4編草彅剛吉岡里帆神木隆之介

奥山由之 コメント(全文)

僕の散歩コースの途中には、川沿いにぽつんと佇む1つの古いベンチがあって、“川沿いにぽつん”と言っても、水辺に近いわけではなく、車道沿いにあるバス停のそれでもなく、芝生の広場の真ん中になぜかそれはあって、球遊びをしている子供たちや、犬の散歩をする人たちがチラホラいるのだけれど、みんな邪魔そうにするわけではなく、かといって座るわけでもなく、ただただ通り過ぎていく。

そのベンチと関わる人を見たことがないので、実は誰にも見えていないのではないかと思ったこともあるのだけれど、恐らく、ベンチの設置場所としては風変わりなスタイルをとっていることで、「あぁ座りたいなぁ」とは思わせない絶妙な調度よくなさがあるのだろう。そのベンチの周辺一帯だけがなぜかコンクリートの地面であることも不思議でならない。
僕がそいつに目をつけてからもう何年も月日が経っているのだけれど、一向に撤去される気配はなく、そいつはやはり誰にも見えていないのかもしれない。

そんなある日、近くで大きな橋の工事が始まった。

東京という街は、いつだってうねるように、まるで生き物のように、部分的な変化を続けている。便利になったり、綺麗になったり、勿論いいこともあるのだけれど、いつの間にか無くなってしまう景色を懐かしむ間もなく、記憶は塗り替えられてしまう。愛着を抱いていた場所でさえ、久しぶりに訪れると「前はどんな様子だったけ…」なんて忘れてしまうこともしばしばだ。

変わりゆく景色の中で、変わらずそこにいるベンチ。古ぼけた座面はなんだか頼りなく、妙な味わいと個性を放っていて、後ろから眺めたときの、まるでおじいちゃんのような哀愁感に僕は心を奪われ、「いま、このベンチを作品として残しておかないと後悔しそうだ」と思い立ち、ベンチだけを舞台に、誰かの会話を集めたオムニバス映画を作ることに決めました。

というわけで…『アット・ザ・ベンチ』は、変わり続ける東京という街の中で、変わらずに残したい“とあるベンチ”を舞台に、四季折々、ある日のある人たちのちょっとした思い出の時間を紡ぎたい、という個人的な願いからスタートした自主制作映画です。

その思いに呼応して、仲間が1人増え、また1人増え…といった具合に、みんなが “個人” としてベンチに集まってくれました。そうして形成された、サッカーチーム1つ分くらいの僕らは、手弁当ながらも、自分たちでやれる限りのことをやってみよう、という考えで1編ずつをじっくりと作り上げてきました。ある個人の「こういう映画を作りたい」という思いのもとに、同じく「作ってみようよ」という純粋な思いで集まってくれた人たちがいる、そうして作り上げられた作品は、また誰かの「こういう映画が好きだな」という温かな気持ちに届くと嬉しいな、と思っています。

これ以上に純粋な創作は、生涯の中で何度と出来ることか分かりません。
一緒に作って下さった皆さま、本当にありがとうございました!

奥山由之(おくやま・よしゆき)
1991年、東京生まれ。映像監督/写真家
映画・MV・CMなど、映像の監督業を行っている。また、これまでに多数の写真集出版や展覧会を開催。2011年『Girl』で第34回写真新世紀優秀賞受賞。2016年には『BACON ICE CREAM』で第47回講談社出版文化賞写真賞受賞。

『アット・ザ・ベンチ』AT THE BENCH
(2024年/⽇本/86分/カラー/ビスタ/5.1ch)

監督:奥⼭由之
出演:広瀬すず(第1編・第5編)、仲野太賀(第1編・第5編)、岸井ゆきの(第2編)、岡⼭天⾳(第2編)、荒川良々(第2編)、今⽥美桜(第3編)、森七菜(第3編)、草彅剛(第4編)、吉岡⾥帆(第4編)、神⽊隆之介(第4編)
脚本:⽣⽅美久(第1編・第5編)、蓮⾒翔(第2編)、根本宗⼦(第3編)、奥⼭由之(第4編)
⾳楽:安部勇磨
企画・製作:奥⼭由之
プロデューサー:佐野⼤
撮影:今村圭佑
録⾳:佐藤雅之
美術:野⽥花⼦
⾐裳:伊賀⼤介
ヘアメイク:⼩⻄神⼠、くどうあき
編集:平井健⼀、奥⼭由之
助監督:鈴⽊雄太
制作担当:神⾕諒
カラリスト:⼩林千乃
オンライン編集:⼟屋瀬莉
グラフィックデザイン:⽮後直規
配給宣伝協⼒:池⽥彩乃
制作・配給:SPOON