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ユーリー・ノルシュテイン 文学と戦争を語る

11月8日(金)公開

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11月8日(金)公開

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ウクライナ侵攻から1年後、ノルシュテインが語ったこととは──
混迷の時代に、文学と芸術の可能性を探るドキュメンタリー。


2022年2月、我々はロシア軍がウクライナへ侵攻を開始したとの報を受けた。
入り乱れる情報と増え続ける死者。
一体何が起こっているのか、現実とは思えぬ状況に、私たちはただ呆然とするしかなかった。

モスクワに住むノルシュテインさんは今、何を考えているのだろうか——。
話を聞いてみたいと思った。
合計で3回のインタビューが実現したのは1年後の2023年のことだった。
1回目は2月22日、2回目は7月3日、3回目は8月24日に行われ、合計で8時間にも及ぶインタビューとなった。
そこで語られたノルシュテイン氏の言葉をまとめたものが本作である。

Yuriy Borisovich Norshteyn
ユーリー・ボリソヴィッチ・ノルシュテイン

1941年9月15日生まれ。ロシアのアニメーション作家。『25日-最初の日』(68)でデビュー。『キツネとウサギ』(73)『霧の中のハリネズミ』(75)『話の話』(79)等を制作。切り絵技法による、独特の詩的で繊細な作風が多くの人々を魅了し、映像詩人と評される。日本をはじめ世界中のアニメーション作家たちに多大な影響を与えている。30年以上の歳月をかけゴーゴリ原作『外套』を制作している。
Comment

ノルシュテインは現在を生きながら、この戦争が終わった後の眼で現在を見ている。子供がどんな映画に興味を持つかを観察しながら、その子供の心に残ったものが大人になったときにどう花ひらくのかを考えている。古代ギリシャからも、北斎のいた日本からも、未来からも同時にこの世界を見ている。それは芸術家の眼だ。金銭が芸術を超えた価値基準になってしまう現代、嘘の渦巻く戦時に、ノルシュテインがこれまで緻密に作り続けてきた作品に新たな意味が加わる。

支配者は、戦争は、すべての芸術を、文化を、命を消し、まだ生きている人間から人間性を消していく。ノルシュテインという芸術家にとって、個人にとって、恐ろしいのは、戦場のほんとうの声もいっさい聴こえず、国外に脱出した友人たちの声も聴こえなくなってしまったことでもある。

ほとんどの名のある文化人がロシアから脱出してしまったいま、二〇一四年から警告を発し続けていたノルシュテインの、苦悩の果ての痛切な声がここに響いている。

——奈倉有里 ロシア文学研究者

『ユーリー・ノルシュテイン 文学と戦争を語る』
(2024年/ロシア)

監督:才谷遼
出演:ユーリー・ノルシュテイン