1976年サターン賞・最優秀男優賞受賞・1976年ヒューゴー賞・最優秀映像部門賞 受賞
もう、時間がない。
西暦2024年は、気づけば来年だった。
かなり高い確率で、あなたが目にする未来。
この世は終わり、犬が喋りだす。
悲惨な終末世界をシニカルに描いたSF黙示録ブラック・コメディ

TVシリーズ「0011ナポレオン・ソロ」(64-68)や「アウター・リミッツ」(63-64)などの脚本家としても活躍したアメリカSF作家の鬼才ハーラン・エリスン。彼が1969年ネビュラ賞・中長編小説部門賞を受賞した同名原作を、『ワイルドバンチ』(69)や『砂漠の流れ者』(70)等のサム・ペキンパー監督作の常連俳優、L・Q・ジョーンズが1975年に映画化。
見渡す限り地平線の荒野、人や食料は枯渇し尽くした世界終焉後の悲惨世界を独特のトーンで描写。あまりに異様で絶望感漂う内容ながら不思議と後味は良く、1976年のサターン賞・最優秀男優賞とヒューゴー賞・最優秀映像部門賞を受賞。
「特捜刑事マイアミ・バイス」(84-89)のドン・ジョンソンの出世作であり、ドアーズのレイ・マンザレクが音楽の一部を担当。『マッドマックス』シリーズ(79-)に影響を与えたとも言われており、ゲーム「Fallout4」の元ネタのひとつにもなっているなど、現在に至るまで存在感を持ちながらも日本では劇場未公開に終わっていた傑作である。


主人公の少年とテレパシーを介して【犬が喋る】という画期的設定により、愛らしい見た目と渋い声で発せられる時にブラックな発言が得も言われぬギャップとユーモアを生む。
戦争、環境汚染、遺伝子変異、管理社会、ロボットたちの暴走、偽りのユートピア──舞台である西暦2024年を目前に控え、決して他人事では無くなってしまったひとつの人類予言的一作が、約50年前の世界からようやく日本劇場初公開となる。未来に備え、我々がスクリーンと現実世界という名の荒野に見るのは果たして絶望か勇気か。




『少年と犬』(1975年/アメリカ/90分/原題:A BOY AND HIS DOG/PG12)
監督:L・Q・ジョーンズ
出演:ドン・ジョンソン、スザンヌ・ベントン、ジェイソン・ロバーズ
原作:ハーラン・エリスン
提供:キングレコード
配給:アンプラグド