日時
上映中~7月14日(木)※上映終了
料金
一般¥1,900/シニア(60歳以上)¥1,300/ユース(19歳~22歳)¥1,100/アンダー18(16歳~18歳)¥1,000/ジュニア(15歳以下)¥800/UPLINK京都会員¥1,100(土日祝¥1,300)/UPLINK京都ユース会員(22歳以下)いつでも¥900
上映中~7月14日(木)※上映終了
一般¥1,900/シニア(60歳以上)¥1,300/ユース(19歳~22歳)¥1,100/アンダー18(16歳~18歳)¥1,000/ジュニア(15歳以下)¥800/UPLINK京都会員¥1,100(土日祝¥1,300)/UPLINK京都ユース会員(22歳以下)いつでも¥900
海に囲まれたマルタ島で、主人公はルッツという美しい船に乗っている。
色鮮やかなその木造船は、この地の漁師が先祖代々で受け継ぎ、それぞれの家族が大切に守ってきた伝統の船。彼も曾祖父の代から修理を繰り返して、漁に出てきた。彼にとってルッツで漁をすることが、誇りをもって取り組める唯一無二の仕事であり、生まれ故郷の港町において彼は伝統継承の担い手である。
主人公を悩ませているのは、魚が捕れないという厳しい現実。温暖化の影響もあって、魚の量は減るばかり…。それを打開するために作られたはずのEUの漁業のルール(※1)や、大型トロール船(※2)の存在が個人経営の漁師たちを苦しめている。
小さな港町のコミュニティには、ヒエラルキーが存在し、その秩序は保たれている。そこを仕切るのは仲買人。絶対的な権力をもち、魚市場での競りを仕切る存在。彼らが競りにかける順番や最初の価格を決める。仲買人に逆らえば競りには参加できず、漁師は自ら今日捕った鮮魚を港周辺のレストランに売りに行くしかない。ルッツの漁師は一番重要な存在でありながらも、このヒエラルキーの末端の存在といえる。
ルキーノ・ヴィスコンティ監督・初期の傑作で、イタリア・ネオレアリズモの代表作『揺れる大地』(1948)。この名作では、シチリアの漁村を舞台にその地の実際の漁師たちを配役して、仲買人に反旗を翻した漁師の苦悩と葛藤を見事に描き切っている。アレックス・カミレーリ監督は、『揺れる大地』にオマージュを捧げる意味で、70年以上が経った現代のマルタを舞台に、実際の漁師を主人公に本作を製作した。
お金を稼ぐことは、家族と生きていくために必要である。結婚し初めての子供が生まれた主人公に、その現実が立ちはだかる。ただ、自分の誇れる仕事を持ち、家族と一緒に幸せに暮らしたい。それだけの小さな望みが、彼には果てしない夢のように思えてしまう。その窮地に立ち、彼は何を思い、どんな選択をするのか。
誰もが立つ人生の岐路、その先に何があるのかは誰にもわからない。そして、主人公が何を決断しても、それを責めることは誰にもできない。自分の人生は、自分で選び、進んでいくしかないのだから―。
※1:EUの共通漁業政策(CFP)のこと。国ごとの漁獲量や魚の種類別の禁漁時期など様々な規定がある。
※2:トロール船漁法で漁をする大型船。底引網で海底の生物を根こそぎ捕獲することから、混獲となり漁獲対象ではない種を大量にとってしまうことや、海底を傷つけることが問題になっている。
地中海の島国マルタ。
26歳のジェスマークは、曾祖父の代から受け継いできた伝統の漁船ルッツで漁師をしている。ある日、漁に出るが魚はあまり捕れず、ルッツの船底に水漏れを見つける。修理をしなければ、大事な商売道具が使えなくなってしまうが、修理にはお金がかかる。
不漁が続き、思うように収入を得ることができない状況の中、生まれて間もない息子の発育不良がわかり、治療にも費用がかかることになってしまう…。動揺して裕福な実家を頼ろうとする妻デニスと、夫婦二人で乗り越えたいジェスマーク。夫婦の間には徐々に不協和音が生じ始める。
親友のデイヴィッドの手伝いもあり、ルッツの水漏れを直すことはできた。しかし、漁師である以上、安定した収入を常に得ることができないことを痛感したジェスマークは、漁師としてやってはならないことに手を染めてしまう…。
ルッツの漁師という職業に誇りをもって生きてきたジェスマークだったが、妻と息子を養っていくためにはお金を稼がなければならない。このままルッツで漁を続けるのか、安定した収入を得るために別の仕事に就くべきなのか。人生の選択を迫られることになる―。
『ルッツ 海に生きる』(2021年/マルタ/カラー/ビスタ/5.1ch/95分)
脚本・監督・編集:アレックス・カミレーリ
出演:ジェスマーク・シクルーナ、ミケーラ・ファルジア、デイヴィッド・シクルーナ、スティーブン・ブハジーア、ウダイ・マクレーン
日本語字幕:杉本あり
公演:駐日マルタ大使館
配給:アークフィルムズ、活弁シネマ俱楽部