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過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道

上映中~7月15日(木)※上映終了

©︎『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい』フィルムパートナーズ

日時

上映中~7月15日(木)※上映終了

料金

一般¥1,900/ユース(19歳~22歳)¥1,100/アンダー18(16歳~18歳) ¥1,000/シニア(60歳以上)¥1,300/ジュニア(15歳以下)¥800/UPLINK京都会員¥1,100(土日祝¥1,300)/UPLINKユース京都会員(22歳以下)いつでも¥900

詳細 DETAIL

いま、明らかになる孤高の天才レジェンドの素顔。

写真史上、最大のエニグマに迫る前人未踏のドキュメンタリー!

岩間玄(本作監督・撮影・編集)

1968年、森山大道さんは1冊の写真集で鮮烈なデビューを飾りました。
この年は、プラハの春、ベトナム戦争、キューブリック監督作『2001年宇宙の旅』公開、キング牧師暗殺、パリ5月革命、ケネディ大統領暗殺、アポロ7号打ち上げ、ザ・ビートルズ『ホワイトアルバム』リリース、学生運動の激化など、さまざまな事件が起きました。騒乱と混沌に彩られた激動の1年だったのです。
森山さんもまた、先鋭的なスナップショットで写真界に大きな衝撃を与えました。画面が荒れ、被写体がぶれ、ピントがボケた衝撃的な作品群は、それまでの常識を根底から覆すものでした。
「こんなものは写真じゃない」と写真家たちが激怒する一方、「いや、これこそぼくたちが求めていた本当の写真だ!」と若者たちからは圧倒的に支持されました。彼は写真界のスーパースターとなり、多くの信奉者や模倣者を生みました。つまり時代の寵児になったわけです。
しかし森山さんと写真を巡る物語は、そう単純で生易しいものではありません。賛否両論、絶賛から批判へ転じる時代の気まぐれ、信じられる友人との宿命的な出会いと別れ、不安、迷走、孤独、混乱。森山さんは表現者として何度も危機を迎えました。
けれども森山さんは、どんな時でも決して写真を手放そうとはしなかった。絶望的に追い詰められても、写真そのものをあきらめることはなかった。1枚も撮れない日でも、写真のことを考えて、考えて、考えて、考えて、考えつくして、満身創痍になってもなお、何度でも写真の世界に戻ってくるのです。 

【STORY】

写真とは何か。生きるとは何か。これはひとりの写真家の彷徨の記録である。

2018年秋、世界最大の写真の祭典「パリ・フォト」で伝説の写真集が半世紀ぶりに甦った。写真家のまわりは黒山の人だかり。ていねいな文字で〝森山大道〟とサインする姿を、世界中から集まったファンが、熱いまなざしで見つめている。熱狂の列は途絶えることなく、人々は次々に押し寄せてくる。いったい何が起こっているのか──。

2018年春、森山のデビュー作『にっぽん劇場写真帖』復刊プロジェクトが始まった。1968年に誕生したこの写真集は、コレクターの間で高額で取引されるのみで、その全容が一般の目に触れることはほとんどない。あの傑作をもういちど出版したい。そう言い出したふたりの男がいる。ひとりは、継続的に森山の写真集を世に送り出してきた編集者・神林豊。もうひとりは、森山作品を含め、多くの写真集を手がける造本家・町口覚。敬愛する森山の処女作を決定版として世に送り出すべく、ふたりの奮闘がはじまる。

同じころ、東京で小さなカメラを構えるひとりの男がいる。彼は路地を抜け、脇道に分け入り、街の息遣いを次々に複写していく。その様子は都会を彷徨う野良犬を思わせる。
森山大道、80歳。オリンピックを前に激変していく東京の姿を、コンパクトカメラ1台で大胆に切り取っていく。ハンターのように。
これまでほとんど知られることのなかった森山のスナップワークを、映画はていねいに拾い上げていく。新宿、池袋、秋葉原、中野、渋谷、神保町、青山……。激変する東京で森山は何を見つめるのか。街と写真家はどう火花を散らし、いかに共鳴し合うのか。魔法のような傑作はどんなふうに生まれるのか。決定的瞬間とは何なのか。謎めいた写真家の素顔を、映画はすこしずつ解き明かしていく。

編集者と造本家は『にっぽん劇場写真帖』決定版制作に賭けていた。この膨大な写真群は、いつ、どこで、どのように撮られたのか──歴史的資料として後生に残そうと、事実関係に執着するふたり。一点一点、来歴を粘り強く確認し、執拗に問い質し、本人の記憶を解きほぐそうと試みる姿は、取り調べに挑む刑事さながら。その作業は、森山の人生におけるかけがえのない思い出、いまはもう会えなくなってしまった仲間の記憶、痛みや絶望、迷いと不安をあぶりだすとともに、それらを来たるべき希望へとつなげていく。

森山大道(もりやま・だいどう)

1938年大阪生まれ。岩宮武二、細江英公のアシスタントを経て、1964年独立。写真雑誌などで作品を発表。1967年「にっぽん劇場」で日本写真批評家協会新人賞受賞。1968年から1970年にかけて写真同人誌「プロヴォーク」に参加。ハイコントラストや粗粒子画面の作風は〝アレ・ブレ・ボケ〟と評され、写真界に衝撃を与える。

【主な写真集】
1968年 『にっぽん劇場写真帖』
1972年 『写真よさようなら』、『狩人』
1982年 『光と影』
1987年 『仲治への旅』
1990年 『サン・ルゥへの手紙』
2002年 『新宿』
2005年 『ブエノスアイレス』
2007年 『ハワイ』
2011年 『ON THE ROAD』
2012年 『カラー』、『モノクローム』
2013年 『実験室からの眺め』
2015年 『犬と網タイツ』
2017年 『Pretty Woman』
2018年 『東京ブギウギ』、『Lips! Lips! Lips!』
2020年 『Moriyama Daido’s Tokyo: ongoing』


【主な展覧会】
1999年 『daido MORIYAMA: stray dog』(サンフランシスコ近代美術館)
2003年 『光の狩人 森山大道1965-2003』(島根県立島根美術館、他)、『DAIDO MORIYAMA』(カルティエ財団現在美術館、フランス)
2008年 『森山大道展 I. レトロスペクティヴ1965-2005、II. ハワイ』(東京都写真美術館)
2011年 『オン・ザ・ロード 森山大道写真展』(国立国際美術館)
2012年 『William Klein + Daido Moriyama』(テート・モダン、イギリス)
2014年 『森山大道 終わらない旅 北/南』(沖縄県立博物館・美術館)
2016年 『DAIDO TOKYO』(カルティエ財団現在美術館、フランス)
2018年 森山大道写真展『FRAGMENTS 断片』(三影堂撮影芸術中心、中国)
2020年 『森山大道の東京 ongoing』(東京都写真美術館)


【受賞歴】
1967年 第11回日本写真批評家協会新人賞受賞
1983年 日本写真家協会年度賞受賞
2003年 第44回毎日芸術賞受賞
2004年 ドイツ写真家協会賞受賞、日本写真家協会作家賞受賞
2012年 ニューヨーク国際写真センター(ICP)生涯功労賞
2018年 フランス芸術文化勲章 シュバリエ受勲
2019年 ハッセルブラッド財団国際写真賞受賞

『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』(2021年/日本/112分/5.1ch/スタンダード)
監督・撮影・編集:岩間玄
出演:森山大道、神林豊、町田覚
音楽:三宅一徳
プロデューサー:杉田浩光、杉本友昭、飯田雅裕、行実良
制作・配給:テレビマンユニオン  
配給協力・宣伝:プレイタイム
企画協力:森山大道写真財団ほか  
印刷協力:東京印書館、誠晃印刷
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会