本作は、フレンチSFのパイオニアであるステファン・ウルの原作「Oms en Série」をもとに、ブラックユーモア溢れる幻想的な画風のアーティスト、ローラン・トポールが4年の歳月をかけて原画デッサンを描き、<切り絵アニメーション>という手法で鬼才ルネ・ラルーによって1973年に映画化された。音楽はジャズピアニストとしても名高いアラン・ゴラゲールが手掛け、そのロック・サウンドが映像に一層サイケデリックな印象を与えている。あまりに独創的でファンタジックな世界観で瞬く間に批評家・観客たちを魅了し、アニメーション作品として史上初めて第26回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞。絶賛評はフランス国内だけに留まらず、イタリアのトリエステSF国際映画祭では特別賞、アメリカのアトランタ映画祭ではアニメーション映画のグランプリ、テヘラン児童映画祭では大賞を受賞するなど世界中で高い評価を得た。
日本でも1985年の劇場初公開以来カルト的な人気を誇り、2020年12月に東京・渋谷で行われた1週間限定上映でも満席回が続出。作品誕生からまもなく半世紀を迎える今なお新たなファンを獲得し続けている。今回待望のDCP上映でトポール×ラルーが作り上げた世界観のクオリティの高さがスクリーンでより一層体感可能になり、アニメーション映画のマスターピースに再び命が吹き込まれた。